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【事例紹介】大きめなプリズム度数と仕上がり

こんばんは!プラオプ ハセガワです。

今日のお話は左右合計で15プリズムという比較的大きめなプリズム度数を組み込んだ事例です。

お困りの内容は、「外斜視」と「目の疲れ」そして、片目が外を向いてしまう「見た目」でした。

外斜視は両目の視線を合わせる事ができず、片方の目は真っ直ぐ向いていてももう片方の目が大きく外側を向いてしまう状態です。

ただ「抑制」といって、外を向いている目は無意識にスイッチを切ることで、視界が2つダブってみえる「複視」と言う状態になっていない事もよくあります。

ただ、元々は一つに見えていたのに、後天的な原因(例えば事故や怪我、疾患など)によって斜視になると、「抑制」が働かないので「複視」に悩まされてしまう事があります。

今日ご紹介する事例のお客様は、大きな斜視が確かにあるのですが、自力で両目の視線を合わせる事ができます。このように両目で見る事ができる場合は「斜位」と言うのですが、「斜位」というには大きく、力を抜くと視線が外れる「斜視」になる・・・。そういう特性をお持ちでした。

おそらく、小さい時から寄り目をグイグイ頑張っていた事がトレーニングになって両目で見る事ができていたんだろうと思われます。

両目で見る事ができているからこそ「抑制」が起きずにいたので、その両目でなんとか見ようとし続ける事が大きな疲れにつながっていたんだろうと思います。

目の仕組みには「ピント合わせ」を行うと「寄り目」が自動で起きるようになっています。これを「調節性輻輳」と言うのですが、視線のズレを補うために通常使われる寄り目(融像性輻輳と言います)では足りず、本来は近くを見やすくするために備わっている「調節性輻輳」を使ってなんとか視線を合わせて見ていたのです。

遠くを見るときはピント合わせが抜けていなければなりません。しかし、両目の視線を合わせるために「調節性輻輳」を使うと、ピントが入ってしまうので遠くが見えにくくなってしまうなんて事が起きてしまうのです。

実際の片目ずつの視力測定よりも両目での測定の方が視力が大きく落ちてしまいます。

はっきり見ようと思えば視界がダブってしまい片目が外を向いてしまう。しかしダブらないようにすると大きくぼやけてしまう・・・。

このような状態を「斜位近視」なんて呼んでいます。

つまり目標は、両目の視線合わせの負担を軽減する事にあります。

まず、大事なのは両目に移る映像が鮮明である事。少し大きめな乱視があったのですがコレは放置できません。

両目に鮮明な映像が映ると、それを一つに纏めようとする強い力が発生します。

持っている能力をしっかりと生かすためには、片目ずつの正確な度数設定が重要なのです。

そして、斜位近視が消えるようプリズム度数を組み込んだわけですが今回は1m先で15cmのズレを補う「15プリズム」という比較的大きめなプリズムを組み込むことにしました。

乱視も比較的大きく、しかも大きなプリズム度数。問題は作成が可能かどうか?

しかもプリズム度数が強いと「色収差」といって、白い明かりの周りに青や黄色に滲んでしまう事が起きます。

プリズムレンズは製作にあたってはレンズが薄くなる屈折率の高い素材、いわゆる「薄型レンズ」が有利なのですが、一般的には屈折率が高いと色滲みが大きくなる傾向です。

今回のプリズム度数ではその色滲みの影響は無視できません。なのでできるだけ屈折率の高くない素材を使いたかったのです。

そんな条件を叶えてくれたのが「ZEISS」でした。ツァイスのレンズは単に「度数が入る」だけではなく、光学的な性能が十分であるか?を考慮します。

つまり難しければ難しいほど、性能の差が出るレンズと言えます。

フレーム選びも重要です。大きなフレームは向きません。そもそもレンズの直径が小さくなってしまうからというのもその理由ではあるのですが、強めのプリズムレンズは大変に厚くなり重くなります。しかしフレームの大きさを小さくしたらそれはかなり軽減されます。

フレームは「VioRou」の「Eriko-2」を使いました。

仕上がりがこちらです。上から見ると、鼻側が大きく厚くなっているのがわかります。

しかし、レンズの組み込み方を工夫することで、正面からは・・・

レンズの存在感をほとんど感じません。

そしてこちらが掛けたところです。お客様にご協力いただき目元の写真をいただきました。

15プリズムですと、計算上約4mm目の位置が外側に広がったように見えます。

よく誤解されているのが、プリズムメガネをかけると目も向きが変わって見えると言うことですが、実際はメガネ越しに目が真っ直ぐ前を向くようになるわけですから、うまく斜視を補う事ができたら、むしろ目の向きは正しく前を向いて見えるのです。

フレームの選び方も、目の位置が広がって見える事を想定して選んだ事もあり、掛けた姿も大変自然に見えます。(I様ありがとうございました!)

結果として両目の視線を合わせる負担が減り、遠くも近くも(特に近く)ダブらずにはっきり見えるようになり、目も外に外れにくくなりました。

これに寄り目の量と質をあげるトレーニングをご提案して、より負担が軽減される事を狙っています。


I様には、同じようなお困りの方に参考になればと記事と写真の掲載をご快諾いただきました。

ありがとうございます!!

今後ともメンテナンスなどお気軽にお立ち寄りください!

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