夜が眩しい⑤:両眼視との関係
こんばんは!プラオプ ハセガワです。
夜が眩しいシリーズも5回目。
前回は「スターバースト」と呼ばれる光が散らばるような見え方についてを書きました。
そろそろ「じゃあどうしたらいいの?」と行きたいところですが、すいませんもう一個だけ書かせてください。
それは「両眼視の問題」との関係です。
両眼視と眩しさ
人は個性の塊。誰一人同じ人はいません。
それは目も一緒だと言うことは、いままずっと書いてきたわけですが、それは「視線の向き」にも言えるのです。
瞳を閉じて目が何も見なくていい状態だと、目の向きをコントロールする機能はお仕事がなくなるのでリラックスします。
その目蓋の裏側で目がどっちを向いているか?多くの方は目を閉じると両眼が外向きに広がります。
ですが中には内側に閉じる人もいたり、片目は上を反対は下を向くような方もいます。
よくよく頭蓋骨を眺めてみれば、目は頭の真ん中から外に向かって生えているのでリラックスしたら外に向くのは自然なのかもしれません。
でも目を開けたらそのままでは外の景色が二重に見えてしまうのはまずいので、無意識に両眼の視線を目標に向かって揃えるようにして見ているわけです。
この「目蓋を閉じて目が向いている方向がまっすぐではない」状態を「斜位」といいます。
似ている言葉で「斜視」と言うのがありますが、これは目が開いている状態の時でも目の向いている方向にズレがあることを言います。
なので「斜視」は外見的にもわかる物ですが「斜位」はわかりません。多くの場合「斜位」は異常なものではありません。
ですが、「斜位」にも個性があって、ズレている方向も人それぞれ、ズレの大きさも人それぞれ、しかも、それを補う力も人それぞれです。
両眼で見る事を「両眼視」といい、それによって得られる距離感や立体感などの空間を感じる能力を「両眼視機能」と言うのですが、高度な「両眼視機能」つまり私たちがそもそも備えている「世界を3次元で感じる」事が無理なくできるには、両眼が無理なく自然に協調していなければなりません。
そして人は無意識にそれを求めようとしているので両眼は勝手に同じ方向を向くわけです。
ところが「斜位」があって、それを補う力が小さと「両眼視」が困難になります。
するとどうなるか?
「しっかり両眼で見ようとするとシンドイから、なんとなく景色が一つに見えているくらいでやめておこう・・・」としてしまう・・・。
すると、片方の目はシッカリと目の真ん中で見ていても、反対側の目は中心では無いところを使ってみるという、正確ではない「両眼視」をする事があるのです。
これをFixation Disparity(固視ズレと訳されてます)といいます。
ドイツ式といわれる「両眼視検査:両目の協調を測定する検査」ではこの固視ズレを細かく分類して、両眼視の質や程度を考察して眼鏡の処方に生かすのですが、両眼視がしにくい状態がずっと放置されると、人はそれに順応しようとして目の中心でないところを中心として使いはじめてしまう事があります。
最初は中心だけがズレている状態だったのが、もっと深刻になるとそれが固定化されてしまい、さらに進むと目全体に広がっていってしまうこともあるのです。
目の奥にある網膜に並んでいる「視細胞」が光の刺激を受けることで私たちは「見る」事ができるわけですが、網膜のどこもかしこも同じ性能を持っているわけではありません。
網膜の中心である「黄斑部中心窩」という小さな窪みの部分が最も視力が高く、そこからズレた部分は急激に視力が落ちて行きます。
片目を閉じてこの「●」をジッとみてください。
視線を動かさずに周りの文字が読めますか?
そう、ハッキリ見えている部分は実は見ている「中心」部分にしかありません。
ですから「固視ズレ」があると「片目」「片目」で交互に見たらそれぞれハッキリ見えていたとしても「両眼でみたら、固視ズレを起こしている目は実はよく見えていない」という事が起きている事があるのですが、それは自分ではなかなか気がつかないものです。
- 両眼でみるより片目で見た方がハッキリ楽に見える。
- いつも片方の視界が狭く、何かを見落とし気味。
- スピード感や距離を掴むのが苦手で、運転が怖い。苦手。
などに覚えがある方は「両眼視」が苦手で「固視ズレ」を起こしているかもしれません。
そして「固視ズレ」がある方のお困りで共通するのが「眩しさを訴える」と言う事です。
なぜなのか?はスイマセン。ハッキリとこういう理屈です!というのはわかりません。
でも厳密にしっかりと両眼が一つに物を見ていない。微妙なズレを伴う見え方が光の点をダブらせたり実際よりも大きく見えたり流れて見えたり、視界を混乱させるような見え方には繋がっているでしょう。
でもだいたい皆さん「眩しい」と目を凝らすような表情をしている事が多いのは確かです。
そして、特に眩しさ対策の特殊なレンズを使わなくても「固視ズレ」を解消するような度数を掛けていただくと大体の方が「眩しさが大幅に減る」と感じるのも事実なのです。
(実際に両眼視不良の特徴に「羞明:眩しさ」があるとは様々な資料に書かれています)
そんなわけで「光」が目の奥に届くまでの間に「眩しさ」の原因となる部分を考えて来ました。
そこから先の「神経」「脳」「心理」の部分に眩しさの原因がある事もあるのですが、いずれにせよ「光を制御する」事をしなければいけないのは変わりません。
次回からは「具体的に何をするか?」について書こうと思います。
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