レンズの厚みと限界の仕組み③
こんばんは!プラオプ ハセガワです。
さて、レンズの厚みの仕組みを考えるシリーズ3回目
前回は「屈折率」と「レンズ形状の種類」を解説しました。
今回は「レンズカーブ」というものを考えます。
「レンズカーブ」とは?
スポーツ系の大きく顔に沿って湾曲しているサングラスを度付きにした事がある方は「カーブ」という言葉をご存知かもしれません。
「カーブ」とはまさに湾曲のこと、この湾曲具合を数値で表したもので、大きければ強く湾曲しております。
8カーブとか6カーブなんかがサングラスではよく使われています、
ではこのカーブ、具体的にはどういう事なのか?
それはある物体が焦点距離1mを作る湾曲具合を「1カーブ」と言います。
前回のお話によると光を曲げる強さが同じでも屈折率が違うとレンズの形状が違うわけですので、この「1カーブ」は屈折率によって湾曲具合が違います。
でも、フレームの形が8カーブに固定されているところにレンズを取り付けるにはフレームの形状と同じ湾曲に揃えた8カーブのレンズが欲しいですので、屈折率によって8カーブの形が違うのは困ります。
そこで「普通のレンズの1カーブ」をカーブの基準とすることにしましょう。
普通のレンズ・・・クラウンガラスと言われる昔っからある屈折率1.523の素材。それが基準になっております。
すると1カーブとは半径523mmの円形に相当します。2カーブはその半分で261.5mm。だから8カーブは半径65.375mmになります。
度数とは何か?
眼鏡を使っている方ならお馴染みの「度数」とは「屈折力」の事で単位は「D:ディオプター」
これは焦点距離の逆数です。つまり、「1」を焦点距離で割った値です。
なんで逆数かと言えば、焦点距離がレンズにより近い、言い換えれば光がよく曲がるほど「屈折力は強い」のでそのほうが自然です。
焦点距離が1mなら1÷1=1D
焦点距離が50cmなら1÷0.5=2D
焦点距離が25cmなら1÷0.25=4D
焦点距離が17.5cmなら1÷0.175=8D
焦点距離が10cmなら1÷0.1=10D
・・・という具合です。
この屈折力を作るレンズカーブはというと以下の式で計算ができます。
(計算式の理屈は置いときますが極限の概念が必要です。)
ここで出てきた「半径」は先ほど書いた「カーブ」の半径と同じ意味。屈折率が「クラウンガラスの1.523」のとき、カーブ値はそのままレンズの屈折力を表しているのです。
レンズの物理的限界
さて、メニスカスレンズで近視用の凹面レンズを作る場合、裏面は表面よりも強く湾曲させなければなりません。
8カーブのサングラスを度付きにするとして屈折率1.523の素材を使うと表面の屈折力は8Dの凸レンズということになります。
近視であれば凹レンズでなければなりませんから裏面でこの8Dを打ち消す以上の湾曲具合が必要になります。
例えば-2.00Dの凹レンズ(光が拡散していく)を作るとしたら、裏面は単純に考えて10カーブの湾曲が必要になります。(レンズの中心厚は無視しています)
10カーブの半径は52.3mmです。
では思い切って-10Dを作るとしたらどうなるか?裏面は18カーブが必要になりますが、18カーブの半径は29.0mmです。
直径にすると約58mm
スポーツサングラスは顔を覆うためにレンズが大きい傾向で65mm以上のものが多いようです。
すると裏面の湾曲の直径がレンズの直径よりも小さくなり、物理的に作る事ができないというわけです。
実際は屈折率の高い素材を使えば裏面のカーブをもう少し浅くすることができます。
しかし、レンズの光学的な中心は基本的に視線の位置に乗せるように眼鏡を作るので実際にはフレームのど真ん中にレンズの中心は来ません。大体は中心よりも内側にレンズの中心を設定することになるわけですから、必要なレンズの直径はもっと大きくなければなりません。
となると、作成できる限界はもっと小さくなります。
現実にはレンズを作成する装置などの限界があるわけですが、それを無視しても上のような物理的な限界が存在しているのです。
一般的には8カーブのサングラスをそのまま度付きにするとしたら-3.00D位。6カーブでも大体-5.00D位。4カーブで大体-8.00D位といったところでしょうか。
もちろんレンズに使う素材の屈折率やフレームの形状、メーカーによっても変わります。
全ての人に平等に必要なもの、欲しいものを提供したい・・・。
でも物理的限界がある・・・。もどかしいところです・・・。
そんなわけで、レンズの厚みと限界のお話でした。
次は度数がある程度強い場合に、度付きサングラスを作ろうするならばどんな選択肢があるのか?を考えてみたいと思いますが、このテーマはここで最終回です!
おしまい!!
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